可能性の徒花


*原作世代のメインキャラクター全員登場のお話です。

 落書き文章のため、誤字脱字とかあると思いますので余裕ができた時にこっそり直します。

 ちなみに、メインキャラクターはメインサイトのキャラクター一覧からです。

 なので出てないキャラクターもいますすみません。

 それでは、後書きに書きそびれた注意書きでした。2023年1月22日。


「今日は要人が来るらしいですよ、グレンさん」
 カイの声に、グレンは顔を上げた。
 エルニーニャ王国の中央軍司令部、その廊下に立って彼らは会話を交わしていた。
「えーと、東の国のもっと遠い国からくるんでしたね」
 と、長い金髪がきらめくようなリアが、緊張した面持ちで呟く。
「どんな人なんだろう?」
 可愛く小首を傾げたのは。ラディアだ。
「小さくとも立派な国の人たちなんだろうね、ハルもそう思うだろう?」
 声量を落として、アーレイドが問いかける。
「でも立ち会えないんですよね」
 と、ハルの言葉を奪うように、クリスが髪を整えながら告げた。
「むー。一目見てみたかったなぁ」
 心底残念そうに、ハルは吐息を吐いた。
「護衛は上官と、その国の側近の方がやるらしいものね」
 立ち話をしているのは、なにもグレンたちだけではない。
 軍事国家ということもあり、小国の国王はまず軍のトップと会談し、それから王国の王たちに顔を見せるという。
「廊下で不審者がいないか見るだけなんて、つまらないなー」
「他の任務がない人たちも駆り出されてる」
 ハルの言葉を引き継いで、アーレイドは斜め向かいに立つ金色の髪の少年少女を見つめる。
「馬鹿兄、暇なのね」
「正式な場ではちゃんとクライスって呼んでね、クレイン」
 と、兄妹らしい二人が言い合いをしていた。
「にしても、ここの通路、通らないんだろうな」
 グレンの言葉に、痺れを切らしたラディアとハルが頬を膨らませた。
「これも仕事だから、ね?」
「そうですよ、立派な軍人の。グレンさんと一緒にいられるだけで幸せですけど」
「カイ、勘違いされるからそれ以上言うな」
 と、狭くなった廊下に立たされながら、出迎えと言う名の待ちぼうけは過ぎていく。



「カスケードー」
 声をかけるのは、緑髪の青年だ。
 大きな樹が生えたその訓練場は、二人しかおらず、いつものざわめきは息をひそめていた。
「もうじき東の国の人が来るから、出迎えにいかないと。サボったら怒られるよ」
「ニア、わかってるって」
 青い髪の青年は、よっと樹から飛び降りる。
「へぇ」
 と。
 軍服ではない、女性の声がした。
「レリア様、ここは入ってはいけませんわ!」
 ふわりとした髪型で、白いドレスが似合う育ちのよい少女が声をかけた。
「メリテェア、いいのよ。どうせアイスとここのお偉いさんとの会談の間は暇なんだから」
 廊下に立たされている軍人たちの苦労などつゆ知らず、強気にTシャツにジーパンのレリアが呟く。
「お、見つけた見つけた」
「失礼のないようにな、ディア」
 言いながら、黒髪に頬に傷を持つ青年と、逆に女性とも見れる青年が入ってきた。
「あー! さっきまいたと思ったのに! そこの乱暴男とおとこおんな!」
「レリア様、言い方が失礼すぎますわ!」
 その一言に、穏便にことを済まそうとしたディアとアクトが、止まる。
「そっちには青いのと緑とのがいるし、うっしゃ、やる気出るわね!」
「あの、すみません、皆様。レリア様は悪意はないんです!」
 もう悪意の有無が問題ではない。
 確実に怒っている二人は、しかしぎりぎりのところで理性を保っている。
「えっと、レリア・キルストゥとか言ったっけ? 面倒みるのが今日の仕事なんだ」
「今の暴言は聞かなかったことにしますから、待機室に戻ってください」
 ディアとアクトは、あくまで冷静を装って彼女の挑発に耐える。
 メリテェアはあわあわと二人を見てレリアに近づく。
「あー! いると思ったら、本当にいたね、ブラック」
「そうだな」
 静かに入ってきた足音は八つ。
 ブラックと、アルベルト。そして。
「レリアおばさん、珍しいからって観光名所じゃないんだからルールくらいまもぐへっ!」
 カスケードとニアの二人がいる方へ蹴り飛ばされたのは、茶髪に私服の青年だった。
「あーもう、レリアちゃん、ツキお兄ちゃんは青の宿命で護衛に来たんだから、乱暴しちゃだめだよ!」
「いいのよフォーク。見てなさい、戦いが赤の宿命の護衛の仕方。それに、ツキも下手な軍人には負けないわ」
 得意げに笑うレリアは、嬉しそうにフォークの頭を撫でる。
「あの、大丈夫か?」
「いつ、もの、げほ、ことだから……」
 と、青い目と茶色の目が交わる。
 カスケードとツキはしばし、視線を交錯させると、カスケードが目を閉じる。
「カスケード? その人たち知ってるの?」
 と、ニアが尋ねる。
「今日来てる東の国の小国の護衛さんたち、だったような?」
「ねえ、無意味に廊下に立たされるほうが似合ってたんじゃない?」
 ニアが任務も忘れたのかと言わんばかりに、カスケードを睨みつける。
「あ、ごめんなさい」
 とカスケードはあっさり頭を下げた。
「ふーん。仲いいんだ、軍人って、もっと堅苦しい人たちばかりだと思ってた」
 戦闘技能なら全土を見ても卓越している赤の宿命持ちのレリアの手加減に感謝しつつ、二人を見た感想をツキは漏らした。
「なっ」
「いいねー」
「何なごんでるんですの、ツキ様!」
 そこに、メリテェアが駆け寄って来る。
 すると、遠くから怒号と金属が交わる音が聞こえた。
「レジーナの強い軍人とは、一戦交えたかったのよねっ、と」
「ディアとアクト、二人とも怒らせるって、何言ったらこうなるんだ?」
 と、ブラックが呆気にとられ、アルベルトはあわあわと困り果ててフォークを見る。
「止めに入るには、あの女の人、動きが速すぎる」
「レリアちゃん、ちょっと戦闘狂のところがあるから、満足行くまでやっちゃう」
「止めらんねーのかよ、そこのガキ」
 指名され、フォークは眉を寄せた。
「うーん、ぼくまだレリアちゃんに勝ったことないんだ……」
「役に立たねーな」
「そういう言い方は失礼だよ。それより、早くこの事態をおさめないと」
「なにかあったんですか?」
 と、いつからいたのか、クリスの声がした。
「なんだか、侵入者が暴れてると聞いて捜していたんですが……」
「くそっ、この女、強えじゃねえか!」
「ディア、足止めだ! もしかしたら東の国の要人警護を装った侵入者だったのかもしれない!」
 戦闘になっているレリアと、ディア、アクトたちは外野が増えていくことに気付いていない。
「クライス、止めに行きなさい」
「死地に向かうようなもんじゃない、あの場って!」
 廊下組も、何事かとどんどん集まっていく。
「隙を見て撃つしかないか」
 グレンは入った瞬間、現状を理解して銃を抜く。
「キルストゥの赤の宿命、レリア・キルストゥ、止まって……いや、止まれ」
「一同、動くな」
 この騒乱の中でもよくとおる二人の声に、レリアもディアたちも、足を止めた。
「武器もしまうように」
 大総統の命令に、軍人たちは自然と敬礼のポーズになる。
「イリアでも小国に位置する国の護衛者で間違いないな」
「ええ。軍事国家の奴らが、どのくらい強いか確かめたかったの」
 下手な軍人なら逃げ出しそうな瞳に、茶色の赤い宿命持ちは獰猛な笑みを返す。
「申し訳ありません、大総統様。わたくしが止められなかったばっかりに」
「それを言うなら、ぼくも『軍ってどんな中なのかしらー? どれくらい強者がいるか調べに行くわっ』というレリア様を止められなくて」
「年長者であり、青の宿命持ちのお――私が会談が終わるまで止められず、規律を乱させてしまったこと、この身を以てお詫びします」
「いや。連れてくる人選を間違えた、国王の責任です、大総統閣下」
 大総統の背後から、空色の髪の青年が現れる。
「アイス……国王」
「キルストゥたちの躾をちゃんと出来ていなかったのは我の責任。どうすれば」
「いや。挨拶に来られた国王殿より、護衛の方々も同室に招かなかったこちらのミスだ。軍は血の気が多い人間が多い。考えが浅かった」
 大総統と小国の王は、互いに責任の落とし所をつける。
 それを、場にいる皆が、ハラハラと見守っていた。
「皆の者、持ち場に戻れ」
「レリア、メリテェア、ツキ、フォーク、次は国王様に挨拶に行く。もう出るぞ」
 それぞれが、威厳のある声で告げる。
 不満を顔に書いたレリアだったが、小さく息をついた。
「つまんないの」
「次はこっちが勝つ」
 近くにいたディアが、レリアへ向けて宣言する。
「それはないわ。こうみえて、対軍兵器とも呼ばれてるから」
 舌打ちするディアを、アクトがぽん、と手を置く。
「また来るつもりですか?」
「機会があればね」
「レリア様、置いてかれますわ!」
「この勝負、次に持ち越しね」
 言い残すと、颯爽とレリアは歩き出す。
「申し訳ありません。レリア様は好戦的で……」
「挑発に乗ってしまったのは同じだから。気にしないで」
 メリテェアに告げて、アクトは手を振る。
 丁寧に頭を下げると、メリテェアは東の国の面々の後を追った。
「あんなのがいるんだな」
 カスケードが、ニアへ問いかける。
「ちょっと、びっくりだね」
 そう呟いて、ニアは空を見上げる。
「眩しいなぁ……」
 呟いて、微笑む。
 しばらくは、あの一同が話題になるだろう。
 少しでも関われたのは、幸運か不運か。
 ニアは横に立つ相棒を見て、にっこりと笑みを浮かべる。

――キルストゥの国王が殺されず、もしニアが生きていたら、あり得た可能性の一幕。
――それを観測して、フォアが施した能力を使い、どの可能性世界でも残らない男、シーザライズは夢に笑みをこぼす。
――なあ、あんたはこんな夢も好きかい?
――誰にともなく語りかけて、シーザライズは自身が唯一存在出来た世界に戻った。
――彼にとっては、徒花と同じ未来を。


おしまい?




虚空恭子からの後書き。

原作世代全員出せたかな?
もし全員生きていたらあり得た可能性を描いてみました。
人称とか間違いがあったらごめんなさい、訂正するのでお知らせくださいなー。
思いついたから描いた一発書きの落書き文章です。
レリアとフォークは顔が同じでおっけいです。あの人好戦的なんですね。
ちなみに、メリテェアだけは軍にはいません。母親がレリアと友達なので、小国のほうで育ってるので、軍人になる理由がないんだ。
高校の時にもっとやってればよかったんだ……私が悪かった。すまない。
とりあえず、ラストのようにあり得た可能性世界です。
みんなが幸せな、原作世代組全員登場話。
ネタがあったらまた違う形で出したいですね。
で、第二部はプロット進んでません。別名義のゲーム作らんとならんし、ちまちま頑張ります、ごめんなさい。
数年かかりそう……あう。
では。2023年1月22日でした。(とりあえず載せて後で書き直そう、落書き文章だ!(おい))

追記:2023年1月29日ご指摘ありがとうー! ぜんっぜん気付いてなかった! 直しましたー!